#9 セミナー5日目 デンマーク空軍基地訪問<後半>

ランチ休憩中に、アフガニスタンで使用した装備品を見せて下さいました。

ランチ休憩中に、アフガニスタンで使用した装備品を見せて下さいました。

 

1週前の『第8話 デンマーク空軍基地訪問 前編』で掲載していた防弾チョッキやヘルメット(スコープ付き)、犬用のベストの他に、ウェストポーチの中には救急セットがずらり・・・2つが犬用、1つが人用だそうです。薬物を飲み込んだ際、吐き出させる為の注射器には液剤が入っておりすぐにでも使用できる状態。

そのほか、解毒剤、止血、切開キット・・・戦地へ出発する前には3日間獣医学等の知識を学び派遣される国によって救急セットの中身を入れ替えるそうです。これだけの準備をしていても、万が一の場合は軍用犬の為に救助ヘリコプターの要請をかけ、すぐに野戦病院(人間用)へ搬送し処置を行ってもらうそうです。
先月までアフガニスタンにいたというフェロー君は、薬物の影響で出血が止まらなくなってしまい、その病院で処置を受けたそうです。

 

使用する麻薬や爆発物はすべて本物です。右はダイナマイトなど…

使用する麻薬や爆発物はすべて本物です。右はダイナマイトなど…

 

麻薬探知のデモンストレーションで使用された薬物は「マリファナ」(本物!)でした。1つはセミナー参加者の日本人女性がポケットに隠し、もう一つは携帯の中に隠しフェロー君が捜索を開始!ものの数分で発見して鼻先で薬物の位置をハンドラーに教えます。
ちなみに、もしも体内に隠しても犬の鼻をごまかすことはできないそうです。

 

ポケットに隠した「マリファナ」を発見!所持していた方の膝に顎を載せてマーク!(画像が見えにくくてごめんなさい)

ポケットに隠した「マリファナ」を発見!所持していた方の膝に顎を載せてマーク!(画像が見えにくくてごめんなさい)

 

この後、帰りの空港で他の麻薬探知犬にマークされないか?が心配だった私達。イェスパー大尉は、「ひょっとしたら残臭でマークされるかもしれないけど、説明をしてきちんとボディーチェックを受ければ帰れます」と一言。(もちろん無事に全員で帰国しました)

 

カーテン下のダイナマイトをハンドラーに教えるバーナー君

カーテン下のダイナマイトをハンドラーに教えるバーナー君

 

クリッカーが鳴るまで、何度もターゲットを見つめてしっかりと教えていました。爆発物探知犬の活動の場は、戦地ばかりではなく、芸能人や政治家など要人が訪れる場所で先に捜索活動を行う仕事もあるそうです。
活動現場は、湿度や温度もまちまちで、熱い場所や雪の中など様々な状況でのトレーニングも実施しているとか、アフガニスタンでは手作り爆弾も多く、その匂いを覚える為には安全に回収した後、実物をトレーニングに使用して匂いを覚えさせるのだそうです。多くの匂いを覚えている犬達ですが、1度に2種類の匂いを使用してトレーニングを行い、匂いの種類を1週間毎に変更し3か月で現場デビューできるまでに育てていくのだそうです。(もちろん楽しいトレーニングで)

 

人がいけない場所の捜索はレーザーポインターの先を捜索するよう犬に指示を出します。

人がいけない場所の捜索はレーザーポインターの先を捜索するよう犬に指示を出します。

 

パトロールの様子。ここでは、相手の動きを見て自己判断で吠え始め、飛び掛かります。ボス君についているリードの位置にご注目!吠えたりする際、喉や首を痛めないための配慮で、ベスト後方にリードを付けられるようになっています。

パトロールの様子。ここでは、相手の動きを見て自己判断で吠え始め、飛び掛かります。ボス君についているリードの位置にご注目!吠えたりする際、喉や首を痛めないための配慮で、ベスト後方にリードを付けられるようになっています。

 

いろいろなデモンストレーションを見せてくれる3頭の犬達を少し休憩させてから、屋外でのパトロールの様子やトレッキング(犯人追尾)、遺失物捜索、バイトトレーニングと、午後からも盛りだくさんの内容でした。
参加者からの質問は途切れることがなく、とにかく詳しく丁寧に教えて下さったのですが、「デンマーク軍には何頭の軍用犬がいるのか?」だけは「答えられません」と絶対に教えていただけませんでした。

 

休憩中に大尉が隠したカギ、イヤフォン、小物類を探すボス君

休憩中に大尉が隠したカギ、イヤフォン、小物類を探すボス君

 

すべてのトレーニングを「正の強化」で行っています。と付け加えて説明して下さる大尉。バイトトレーニングでは犬の狩猟本能を活用してプロテクターを噛ませ、持って帰るまでをトレーニングとしている事を教えて頂きました。
最初は噛む練習用のプロテクターを使用し、徐々にアームカバーや、防護服へと対象が大きくなるのだそうです。攻撃性の問題について「トレーニングにより攻撃性が増すことは?」との質問には、力強く「トレーニングと本能は違う!」と断言されました。

 

私もバイトトレーニングに挑戦!まだ小さいとはいえ、踏ん張らなければ引きずられそう!?

私もバイトトレーニングに挑戦!まだ小さいとはいえ、踏ん張らなければ引きずられそう!?

 

噛む力の強いジャーマンシェパードと、噛む力は弱いが動きが俊敏なマリノア…女性陣のバイトトレーニングのお相手は、ボス君が一役かって出てくれましたが、ずしりと重い防御服の上からでも犬歯が骨に食い込む感じは伝わってきました。

前日にもご説明頂きましたが、軍用犬達は毎日厳しいトレーニングばかり受けているのではなく、心と体のケアのため、勤務以外は家庭犬にもどって過ごすほか、ケンネル併設のプールや、ウォーターウォーキング、マッサージ、専門医によるカイロプラクティックなどの施術も受けています。

 

スライドの画像、ケアの様子も紹介されました。

スライドの画像、ケアの様子も紹介されました。

 

それでも、生涯現役というわけにはいかず、どの軍用犬もリタイヤの時期を迎えます。
軍用犬達のリタイヤの時期は、ジャーマンシェパードで6歳~9歳、マリノアで9歳~11歳との事。リタイヤ理由の多くは病気やケガが多いそうです。気になるリタイヤ後の犬生ですが、(1)ハンドラー宅で家庭犬になる、(2)里親を探す、(3)安楽死になることも。
時には命の危険にも遭遇する彼らですが、引退の日まで健康で、その後は家庭犬としてゆっくりと過ごす日が来ることを切望しつつ別れを惜しみました。

 

日本からの参加者総勢16名と、ヴィベケ先生、大尉、ボス君、バーナー君、フェロー君

日本からの参加者総勢16名と、ヴィベケ先生、大尉、ボス君、バーナー君、フェロー君

 

そして~この夜はお楽しみ!ヴィベケ先生、ヤンさんと私達とで夜のBarへとくり出したのでした。デンマーク料理を食べて、のんで、歌って、踊って!忘れられない夜となりました。(がその画像は全員の名誉のために紹介を控えておきます。1つ言えるのは、軽やかなステップで仲良く踊るヴィベケご夫妻とは違い、私達は・・・手をつないで回る・・・まるでカァ~ゴメ~♪カゴメ~♪でした笑)

 

いつも仲の良いご夫妻。この日はダンスをご披露下さいました。

いつも仲の良いご夫妻。この日はダンスをご披露下さいました。

 

次回はデンマークセミナー6日目、問題犬のコンサルと、開業獣医師ティナ先生のお話 つづく・・・

 

 

 

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