犬との散歩の楽しみ方。
文:B-Paws 中沢俊恵,CPDT-KA
既に新しい1年が始まり、世の中も通常の流れに戻るころ。
年末年始は楽しく穏やかに過ごせたでしょうか?私は愛犬との散歩をいつも以上に丹念に楽しむ時間を過ごすことができました。その時間は自分の愛犬を”犬と云う動物”として観察するためのもののようでした。
みなさんは、愛犬とどんな散歩をしていますか?私は自然の多い場所で愛犬を自由に歩かせ、その後ろをついて歩くことが好きです。もちろん、危険がないように細心の注意を払いながらの制限ありの自由ですが。
インスタ等で紹介しているのでご存知の方もいるかもしれませんが、私の現在の5代目愛犬は複雑な事情を抱えたややこしい交雑犬種です。父犬は猟犬の血を含み、何代かに渡って野犬として生きてきた犬なのではなかろうかと推測されます。
そんな私の愛犬は自然の多い場所へ連れだすと“ハンターモード”に入り、脇目も振らずに何かの匂いを追跡し始めます。右、左、急なUターン、速度を上げたり落としたりと変則的に動き回り、地面に残る匂いの痕跡を追いながら動物の死骸や骨、糞や巣穴などを見つけ出します。匂いの行き着く先が木の上であることもあります。
何かの動物が通ったあとを忠実に辿っていく愛犬は、そこにはもう居ない何かの存在を私に感じさせてくれます。
愛犬がハンターモードで嗅覚の世界を楽しんでいるときに私ができることは何もなく、愛犬の安全を確保しつつ追従し、邪魔しないようにひっそりと存在するのみです。(というか、私の存在は望まずとも空気になってしまう!)
あるとき、そうした私の姿を見たお爺さんが「犬に遊ばれてるなぁ。そんなんじゃダメだろ。」と大笑いしました。
なるほど、傍から見たら私は愛犬に振り回されているだけのダメ飼い主にしか見えないようです(苦笑)。元々、私は愛犬には自由に匂い嗅ぎを堪能してもらう散歩が好きなのですが、新しい愛犬は歴代の犬達よりも遥かに動きも多くスピード感があるので、余計にそう見えるのでしょう。
愛犬が嗅覚をふんだんに使い、その先になにかのお宝を発見した時の喜びはきっと何にも代えがたいもの。そのお宝が私にとって「やめて~」と叫びたくなるような代物であったとしても、です。
散歩は愛犬の時間。私は犬を従わせて歩くよりも、犬に付き従って歩く散歩の方が楽しいのです。私たちには発見できないような物を発見して歩くこの壮大な宝探しゲームに参加するならば“犬に従うこと”それが大事なルールなのだろうと思います。
私は愛犬が生後2ヶ月くらいの頃から、紆余曲折有り、食事は床にバラ撒いた状態で与えていました。思えばあの頃から嗅覚の正しい使い方を強化していたことになるわけですが・・・。
犬は匂い嗅ぎをするほどに脈拍数が低下するということがわかっています。さらには、短いリードと長いリードでは、長いリードでの散歩の方が匂い嗅ぎをする時間が長くなるということも。嗅覚を使うことは犬を落ち着かせストレス低下に大きな役割を果たしてくれるので、こうした日々の散歩により、愛犬の心身の成長を大きくサポートすることが出来ているのだろうと感じます。
愛犬の後ろ姿を見つめながら、私は愛犬が視ている匂いの記憶に想像を膨らませる・・・散歩の時間が私は大好きです。愛犬にも私にもとても大切な時間です。
視力を失ってしまった犬たちにも、嗅覚の世界は変わらずそこに在ります。いつか愛犬が老いて視力が弱くなろうとも、愛犬には変わらない世界を魅せてあげたいものです。
ヴィベケの住むデンマークにはどんな匂いの世界が広がっているのでしょうか!
ヴィベケの愛犬インディの話を聞いてみたくなりますね。
B-Paws中沢俊恵,CPDT-KA