犬は人には敵わない?

コラム 2018年6月20日 

文:B-Paws 中沢俊恵 CPDT-KA

 

頭の良い犬種、頭の良くない犬種などと世の中は犬の能力にランキングを付けたがったり、犬と人とを比較して、人の方が利口であることを示したがったりもします。

なぜ、そのようなことをする必要があるのでしょうか。

 

私たちにも得て不得手があるように、犬にもあり、それは犬種によっても異なります。それもそのはず、私たち人間が犬をそのように作り上げてきたのですから。

 

例えば獲物を追う為により優れた脚力を持つ犬が欲しい、より優れた嗅覚を持つ犬が欲しい、獲物の居場所を知らせる為のよく通る大きな吠え声を持った犬が欲しい、広大な敷地の侵入者を追い払う為により頑強な犬が欲しい等、私たちの祖先は必要に応じた能力に長けた犬の交配を繰り返すことで、その目的を果たしてきました。

走るスピードを競うならヨークシャー・テリアはグレーハウンドに決して敵いませんが、ネズミを駆除することにかけてではグレーハウンドはヨークシャー・テリアに敵わないでしょう。羊の群れをまとめるならコモンドールはボーダー・コリーに敵わないでしょう。しかし、羊の群れに紛れて捕食者から羊を守ることにかけてならば、ボーダー・コリーはコモンドールに敵わないでしょう。

犬種ごとのルーツを無視して、あるひとつの側面だけを比較しランキングをつけてしまうのではなく、それぞれに得意分野があるということを私たちは忘れるべきではありません。

加えて、犬を迎える際には自分がこれから迎えようとしている犬種がどのような目的のもとに作出されたものなのかを十分に知っておくことも大切だと私は考えます。犬を迎えてから「こんなことになるとは思わなかった!」などと云う悲しい台詞を言わずに済むように・・・。

現代の多くの犬達は、昔のように犬種ごとの仕事を持ちませんが、DNAのなかにはそのルーツがしっかりと刻み込まれているので、思いもよらぬところでその能力を発揮してしまうことがあります。そうした犬の行動の多くは現代で問題視されることが少なくありませんが、その犬種のルーツを知っていたならば、その犬にはどのような行動の傾向があるのかを事前に知り、それが後々の問題とならないように予防をしていくことも可能になるからです。

 

少々お話が逸れてしまいました・・・。

 

 

犬と人とを比較して甲乙つけることも、そうです。

人には人の、犬には犬の優れた能力があるのですから、比較できるはずもないのです。

私たち人間は時間の概念を持ち、数字や複雑な言語を扱い、未来を創造していくことができますが、獲物を臭いだけで何kmも追跡して見つけ出すことはできませんし、大自然の中で身ひとつで生き延びていく術も持ち合わせていません。逞しい顎も牙も爪も、見事な脚力も聴力も嗅覚も持っていない私たちは、代わりに豊富な知識と文明を持っています。

ですから、どちらが優れているなどと云うことではないはずです。

互いに足りないところを補い合い、協力し合いながら犬と私たちは長い歴史と共に友情を築いてきたのです。

 

『犬をリスペクトしよう』とヴィベケは繰り返し伝えています。

こうした犬と人とについて考えるほど、ヴィベケの言うその言葉がどれだけ深く重要なものなのかがよくわかります。

犬だけでなくすべての命に対して、ですね。

 

「あれができない」「これができない」と、その犬の出来ないことを嘆くより、出来ることに着目したほうが犬との毎日はより素晴らしいものになります!

退屈なランキングなどに囚われず、その犬の持つ個性と能力に対し敬意を払い受け止め、向き合いながら犬と素晴らしい関係を築いていきたいものですね。

 

B-Paws 中沢俊恵CPDT-KA